研究課題
日本文化の中国へのいわゆる「逆輸入」、特に日本文化の重要な構成要素であった日本漢詩の中国への流伝については、今まで学界ではほとんど言及されていないため、筆者はこの空白を埋めようと考えた。本年度は本課題最後の一年なので、これまでの唐代・明代・清代における日本漢詩の受容に関する検討によって、全体像が見えてきたため、総論として「日本漢詩在中国」(中国における日本漢詩)という論文を完成し、中国の大学学術誌「名刊」にも選ばれている『華東師範大学学報』に寄稿し、第43巻4号に掲載された。その内容を2012年3月上海師範大学でも講演した。なお、前年度の研究成果である論文「明代典籍所収日本漢詩考」を、2011年8月中国吉林大学で開催された「中国古代文学理論学会第17回学術年会」で発表した。一方、これまでおこなってきた研究の中で宋代についての研究はまだ不十分であると感じ、今年度はそれに重点をおいて取り組んだ。宋代において多くの日本漢詩が中国に伝わり、複数の中国書物にその作品が収められているが、このテーマを全面的にあつかった研究は未だにない。本研究は『楊文公談苑』に見られる入宋僧寂照の漢詩作品を取り上げ、歴史・文学・言語学および書誌学の諸方面からさまざまな関連資料を網羅的に集めて詳しく検討した上で、その内容と背景を究明して「宋人所見日本漢詩考」と題して論文にまとめ、2011年11月中国海南大学で開催された「中国韻文学会第5回国際学術研討会」で発表した。関係者の意見を参考にして修正した後、中国の学術誌『域外漢籍研究集刊』(中華書局、北京)に投稿する予定である。上記の一連の成果は、筆者が目指している『中国における日本漢詩の受容』という著書の一部とする予定である。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)
華東師範大学学報(華東師範大学、上海)
巻: 43巻4号 ページ: 1-11
漢学與東亜文化国際学術研討会論文集(香港珠海学院)
巻: (厳従簡『殊域周咨録』所収) ページ: 81-86