日本、中国の笑話研究を通して、それぞれの国の文学、国語、芸能についての理解を深め、日中両国の風土・文化の比較を行うための情報を与えることを目的とし、(1)諸本調査、(2)書誌情報の整理、(3)収集資料のデータベース化、(4)和刻本『笑府』『笑林広記』の翻刻、(5)翻字を行った文字のデータベース化の5項目について研究を行った。 平成21年度については、『笑府』より先行研究が少ない『笑林広記』を中心に行うこととし、諸本調査(撮影を含む)、それに基づく書誌情報の整理を行った。未報告の刊記を持つ本の存在が確認できた一方で、既に研究報告がなされている本の中に所在不明のものがあることを確認した。そのため、追加の調査が必要であるとの認識に達し、平成22年度以降も調査を継続することにした。 翻字及び異体字調査については、和刻本『笑林広記抄』『訳解笑林広記』を対象として行っており、平成22年度以降も引き続き行う。これに加え和刻本『笑林広記抄』については、所収笑話全文の注釈・口語訳を開始した。 当初の研究計画では予定していなかったが、中国笑話の日本笑話への影響関係を明らかにするためには、傍訓(ルビ)についての研究も必要と考え、研究課題に加えることにした。研究遂行のため、この分野に詳しい荒尾禎秀氏が研究組織に加わった。この分野についても研究を開始した。 収集した画像及び翻字を行った本文については、順次データベース化している。新たに構築を進めている新システム(試作版)を利用して、これらデータベース化した資料についての公開をWeb上で開始している。なお、この新システム構築のために山口満氏が組織に加わり、開発を担当している。
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