研究課題/領域番号 |
21520227
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
久保木 秀夫 鶴見大学, 文学部, 講師 (50311163)
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キーワード | 散佚写本 / 古典籍 / 古筆切 / 和歌 / 仮名散文 / 伊勢物語 / 二十巻本類聚歌合 / 本朝書籍目録 |
研究概要 |
本年度も、天理大学附属天理図書館をはじめとする各所蔵機関において、当該研究に関わる古典籍・古筆切類の書誌・内容調査を実施した。結果、犬山城白帝文庫において完全新出の古筆手鑑1帖を発見し、中に伝宗尊親王筆『如意宝集』断簡など、資料的価値の高い古筆切が豊富に含まれていることを確認した。また宝島寺蔵古筆切及び手鑑、鍋島報效会蔵手鑑(の写真版)なども調査し、伝後伏見院筆桂切『風葉集』断簡などを見出した。加えて石水博物館蔵手鑑の中に、『伊勢物語』散佚写本のひとつ、小式部内侍本の断簡とおぼしき1葉を確認し、さらに四天王寺大学図書館恩頼堂文庫蔵古典籍類の中に、俊恵撰の平安時代散佚私撰集『歌苑抄』の断簡2種をも確認したので、本年度はうち『歌苑抄』について論文化した。その他についても順次報告していく予定である。 こうした中で、特に本年度重点的に取り組んだのが、『伊勢物語』散佚写本の研究、及び二十巻本類聚歌合の研究である。『伊勢物語』の方は従来の伝本研究に、二十巻本類聚歌合の方は従来の成立論に、それぞれ相当の問題があり、徹底的な再検証が必要であることが明らかとなった。そこで研究の皮切りとして、『伊勢物語』に関しては天理図書館蔵伝為家筆本を、また二十巻本類聚歌合に関しては永延二年七月藤原実資後度歌合を取り上げながら、その問題点の一端について論じた。 なお、昨年度のうちに口頭発表した、本朝書籍目録、及び禁裏文庫本と冷泉家本についての研究についても、本年度のうちに論文化を済ませた。 その他、古筆切所収情報データベースの更新データの一部と、『散佚歌集切集成』増訂用の本文データの一部を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画の(1)万治四年禁裏焼失本については、まとめに至るまでの見通しをほぼ付けることができている。また(2)散佚作品、(3)その他の重要散佚写本についても、順調に新出資料・関連資料を発掘・研究し得ている。これに加えて、当該研究計画段階には視野に全く入っていなかった『伊勢物語』、及び二十巻本類聚歌合に関する先行研究の問題点と、解明に向けての方向性を見出せたのは、極めて大きな収穫だったと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画のうち(1)万治四年禁裏焼失本については、既発表分と未発表分とを取りまとめ、数年のうちに単行本化することを目指したい。(2)散佚作品については、引き続き新出資料の発掘・紹介に努めていく。(3)その他の重要散佚伝本については、特に『伊勢物語』及び二十巻本類聚歌合に関する従来説の徹底的な批判と、書誌学・文献学に基づく実証的な研究方法に基づく再検証とに重点を置きながら推進していく予定である。
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