ジョン・ゲイの『乞食オペラ』は1728年の初演以来、18世紀を通してつねに人気を博した劇作である。この劇が首相ウォルポールの政治手法を揶揄するものであったことは有名であるが、勿論、時事諷刺の域に収まる作品ではない。『乞食オペラ』は19世紀前半に至るまで社会のあらゆる面でイギリス国民に多大な影響を与え続けており、長い18世紀を代表する文学作品である。本研究では、この作品をベネディクト・アンダーソンのいう「想像の共同体」という視点から精読しつつ、多様なテクスト群と比較対照することにより、19世紀のイギリス国民誕生に果たした『乞食オペラ』現象の歴史性を検討した。
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