研究の初年度は、研究代表者の所属研究機関異動のため、研究に必要な資料の収集及び研究環境の整備に、交付された研究費を使用した。収集した資料の分析を通じて、18世紀から19世紀初頭にかけての演劇と小説の関係について研究を行った。ゴシック小説から派生したゴシック演劇について、ヴィクトリア朝演劇及び小説へどのようにつながっていくのかを検討し、ロマン主義的傾向がメロドラマの隆盛・発展に重要な要素であることを解明した。19世紀初頭に絶大な大衆的人気を博したウォルター・スコットの小説と演劇との関係についても、アーサー・サリヴァンによるアダプテーションの分析を通して、基礎的な検討を実施した。ジェイン・オースティンの小説と演劇との関連は、当時のドイツ演劇の輸入についての、基礎的な情報収集の段階である。ヴィクトリア朝演劇でとくに注目すべきは、シェイクスピアのアダプテーションが多数存在することであり、これらが原作にいかなる改変を加えているかを詳細に分析することを通して、ディケンズ等のヴィクトリア朝小説とのテーマ的相関関係の解明にも着手した。資料収集及びその分析作業と研究環境整備に研究のための時間の大部分を消費したので、研究成果の論文等による発表は、平成22年度以降に行う予定である。
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