平成22年度は昨年度の基礎的作業を踏まえ、より具体的なテクスト分析を、理論的成果を活かして行い、その作業仮説および成果の一部をまとめる作業を行った。具体的には、以下の3点。 (1)ユートピア的衝動という観点に注目しつつ、具体的なテクスト分析をより綿密に行った。まず、理想的コロニーの建設のために異なる環境へと移動した人々の実践と理論の変化をたどり、理想の挫折としてではなく、理想の変化、転化に注目した。次いで、想像力とユートピア的衝動の関係を探り、収集したユートピアテクストを閉塞的にではなく、創造・改変の力としてとらえる可能性を探った。そして、社会主義的ユートピアを、よりきめ細やかに見ることで、単純に社会主義vs.反社会主義的な対立では整理ができないことを確認し、その多様性を考察した。 (2)文学以外の(ユートピア的衝動をもつ)テクストを分析し、(1)の研究を補完した。具体的には、政治言説(社会主義との関連)、経済言説(資本主義およびその批判について)、文化的言説(美術、娯楽について)のテクストとの関係性を考察した。 (3)中間総括および意見交換 昨年度の成果、および、上記の(1)(2)の成果について中間的な総括を行い、外部との意見交換を行った。
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