本研究は、いわゆる「長い十九世紀」と呼ばれる時期のユートピア言説を、人間の<想像力と移動>という視座から考察することで、この時期のユートピアを、ディストピアに至る途中過程としてではなく、多様な可能性をもった創造的言説として捉えた。具体的には、(1)この時期の等閑視されていたユートピア作品も含めてユートピア作品を蒐集・整理し、(2)コロニー建設などの具体的な移動と、想像上の移動の観点から(1)を検討し、(3)ディストピア的傾向と同時に、従来と異なるユートピア的性質も同時に生み出されていたことを確認した。
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