平成21年度の資料蒐集と研究によってえた、Sidenyらのソネット集出版をめぐる事情とShakespeareの初期版本に関する知見をもとに、ソネット形式を劇作品に取りいれた後者のRomeo and Julietの初期版本の性質とソネット的要素のもつ意味を論じる論攷を発表した。 平成22年8月に連合王国オックスフォード大学ボドレイ図書館で資料調査を行ない、同館で利用できるデータベースEarly English Books Onlineと同館所蔵の印刷本などによって、雑録手稿の形式を模倣した、印刷本作品集A Hundreth Sundrie Flowres (1573)をはじめとするGeorge Gascoigneの作品印刷本に関連する資料蒐集を前年度に引きつづき行なった。また、同国の大英図書館に所蔵されているGascoigneの作品手稿の画像資料の取り寄せなども行なった。こうした資料を基に、Gillian Austen George Gascoigne (2008)など近年の研究を参照しながら、Gascoigneが貴族への手稿献呈を宮廷社会での出世の道具としながら、出世によって作品発表の方途を確保していき、手稿流通という作品発表の方法を主題化して、散文物語の方法を開拓していく過程に関する知見をえた。これらは本年以降論文化する予定。 また、次年度以降の研究をにらんで、作品集出版のパイオニアであるBen Jonsonの仮面劇の初期版本や手稿に関する資料蒐集に着手した。
|