研究課題/領域番号 |
21520239
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
篠崎 実 千葉大学, 文宇部, 教授 (40170881)
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キーワード | 手稿文化 / 活字文化 / 献呈手稿 / 宮廷仮面劇 / 四つ折り本 / 大衆劇場 |
研究概要 |
大衆劇場で上演された戯曲の出版の研究では、前年度に発表したRomeo and Juliet研究(Romeo and Julietにおける劇場の詩学」『英文学研究』第87号(2010)1-16頁)につづいて、Shakespeareaの戯曲と出版の関係の考察を進め、Othelloの第一・四つ折り本の性格を見きわめるために、第一・四つ折り本と第一・二つ折り半全集所収のテクストの比較を行ない、その成果を日本シェイクスピア協会編纂の論文集に投稿した(印刷は平成24年度の予定)。その研究により、第一・四つ折り本のテクストが、全集版のテクストと違い、劇場における上演やその準備のための編集作業をとどめる劇場的なテクストであることを示すことができた。 一方、王または王妃への献呈手稿と印刷本の双方で残る、Ben Jonsonの初期仮面劇Masque of Blacknessの献呈手稿本と全集所収のテクストの比較を行ない、全集所収のテクストでは、イングランドとスコットランドの二王国の統合という国王の政策を案に批判し、それを献呈されているWilliam Camdenだけにわかるような形で書き、また自身の作者としての関与の意味深さを強調することで、仮面劇制作を資金面で支える国王と、主催者として作者と称されることのあった王妃から、作者としての権威を奪い返す劇作家の策略がさまざまな面で見られることを明らかにし、仮面劇の作品公表のメディアのもつ意味の一端を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去3年間で、Shakespeareの詩、Sidneyの詩と散文作品、Gascoigneの作品集、Shakespeareの戯曲、Jonsonの宮廷間面劇について考究を進め、詩、散文、大衆演劇、宮廷演劇という4つの分野において一定の眺望をえることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年は、主として作品集出版のパイオニアJonsonのローマ史劇について考察を深めたい。 また、前述4分野にわたる知見の総合をはかることを考えている。
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