平成22年度はサヴォイ・オペラ関連の書物2冊(単著と共著)を出版し、また、ヴィクトリア朝の小説家の演劇性について扱った論文を含む共著1冊が出版された。これまで数度にわたって科学研究費補助金を得て実施してきた19世紀英国大衆演劇についての研究とサヴォイ・オペラについての研究の成果を、このような形で世に問うことができたのは大変な喜びであった。単著については、同業者からの好意的な書評もあった。 具体的な研究の進捗状況としては、昨年度手つかずの状態であったイングリッシュネスに関する資料を文献だけでなく、図版も含め収集できたことが挙げられる。これには国内の早稲田大学、同志社大学、大阪大学などの図書館にお世話になった。また、19世紀英国演劇関係のリプリントが入手できなかった代わりに、この時期の大衆文化に関する図版のリプリントを購入できたため、当時のイギリス国内の劇場や家庭内でどのような品物が使われていたか、どのような値段で購入されていたかなどといった、一見些末に見えるが重要な知見を加えることができ、具体的な文化現象の考察が可能になった。 サヴォイ・オペラに関する研究書の書評(『ヴィクトリア朝文化研究』8号)や日本ヴィクトリア朝文化研究学会のニューズレターにイングリッシュネス関連の記事の寄稿を求められるなど、この研究課題に関心を寄せている同業者が増えていることを感じている。最終年度には英米の国際ギルバート&サリヴァン祭に参加する予定である。
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