本年度に関しては1960年代にアメリカで流行したゴシック・ロマンスについて、18世紀イギリスに由来する「ゴシック小説」の伝統や、アメリカ19世紀末の「お針子ロマンス」などとも関連付けながら、その系譜を明らかにすることを研究の主目的としていたが、カリフォルニア大学図書館で発掘した資料などを活用することで、これらの文学ジャンルに通底する「ヒロインによる家の喪失と回復の物語」のテーマを考察出来た他、及び、騒乱の時代特有の社会不安が、これらゴシック系ロマンスの背後にあることなどを結論付けることが出来た。 また本年度行った研究も含め、これまで継続的に行ってきた「大衆向けロマンス」に関する研究を元に、『ロマンスの王様ハーレクインの世界』(洋泉社・平成22年4月出版・142~150頁)という市販本に、ハーレクイン・ロマンスの出版経緯とその意義について概説を執筆した。 さらに関連する事項として、アメリカにおける書籍の流通に関する研究も行い、その成果は論文「アメリカを変えたブッククラブBook-of-the-Month Clubの現在・過去・未来」として、『外国語研究』(愛知教育大学英語研究室)第43号にまとめた。
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