本年度の平成22年度は研究2年目であり、引きつづきイギリスの1720年代から1770年代の文学作品及び航海記を、国内外の出張により収集した。 特に、9月にアメリカ合衆国のコロンビア大学に出張し、研究課題に関する書物・文献の資料収集を行うことができた。1888年からニューヨークを経由して西海岸から南太平洋に渡ったStevensonに関する調査を行うことができ、本研究課題推進の上で大きな収穫を得た。 『ガリヴァー旅行記注釈』を岩波書店から出版する予定であるが、昨年に引きつづき東京に出張し、逐一確認を行いながら作業を行った。第1篇の「リリパット渡航記」から「第4篇の「フウイヌム国渡航記」まで一通りの作業を終えることができた。来年度はもう一度全体を仔細に検討する作業を行い、出版を目指すことになる。本研究の「英文学における「南太平洋」の意味の変容と変奏を明らかにする」目的に照らして、18世紀の『ガリヴァー旅行記』の南海表象と19世紀後半のStevensonを併せて検討することで、明確な「南太平洋」文化変容像を浮かび上がらせる実績を挙げた。 研究課題に関わる論文集『十八世紀イギリス文学研究(第4号)--交渉する文化と言語』の編纂に携わり、その巻頭論文として「南方へ"Keep still on SOUTHING"--物語空間としての「南海」の発見--」を執筆し公刊した。この刊行、及び日本ジョンソン協会関東支部のシンポジウムでSamuel Johnsonの発表を行うことで、本研究課題の重要性を説く啓蒙活動を効果的に行った。そして、貴重な学術的議論を行うことができ、意義深い研究年度となった。
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