南太平洋を舞台とした英文学作品を、18世紀から現在に至るまで通時的に検証することによって、南太平洋という「場所」が英文学において持つ独特な意義を解明した。ユートピア幻想にいざなう憧憬の場である南太平洋(または19世紀までの用語では「南海」)は、イギリスという国家にとって植民の対象でもあった。さらに太平洋戦争が顕著に示すように、数多くの島々が点在する太平洋は、常に国家間の抗争を惹起する地であった。本研究は、英文学における「南太平洋」の意味の変容と変奏を明らかにすると共に、豊かな物語を生む幻想の地が、なぜ諸国家の抗争の誘因になったかという文化的理由を検証した。
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