ヴィクトリア時代のカトリック復興の中心人物であるニューマンは、福音派的な自己の回心体験からキリスト教信仰を自覚し、当時のオックスブリッジの知識人の常としてアングリカン司祭となった。学者司祭として平凡な人生を送ることが出来なくなったのは、国家による教会への介入に端を発するオックスフォード運動を主導したためであるが、ついにはイングランド国教会が「使徒継承による正統性」を欠いているという結論に至り、ローマ・カトリック教会に改宗した。青年期の回心体験により、啓蒙主義の精神的世界から自己を切り離し、内面世界に沈潜し、自我と神との関係を意識化するというタイプは19世紀後半以降のカトリック知識人の範型を示す。自己定義の必要性に駆られたロマン主義的な自我を持っていた近代人ニューマンが、自己をヴィクトリア的なものの外に位置づける結果となる権威主義的なカトリック教会を選択した背景を、新しいニューマン研究に依拠しながら明らかにするべく研究を行なった。特に本年度は教皇庁によるニューマンの聖人認定の第一歩である福者の認定がなされた年に重なり、一般書も含めてかなりの一の書籍が出版されたので、次年度の研究につなげる上で資するところ大であったと評価している。
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