研究概要 |
本研究の目的は、ジェフリー・チョーサーの写本と刊本の言語について、コンピュータを利用し、その英語の語彙・統語・文体を総合的に研究し、チョーサーのtextual criticismに貢献することにある。 本研究では、『カンタベリー物語』のGg写本と他の写本やテクストとの間に生じた異同の問題を取り上げる。Hengwrt写本とEllesmere写本は『カンタベリー物語』のみの代表的写本であるが,Gg写本はチョーサーの最も初期に書かれた全集と言われる。これは,Dd(Dd.4.24)写本やコーパス(Corpus)写本と同じく15世紀初期に書かれたものであり、一部欠落部があるもののチョーサーの重要な写本の一つである。 『カンタベリー物語』Gg.4.27写本のデータ入力を行い、『カンタベリー物語』Hengwrt写本とEllesmere写本およびBlake版・Benson版などとその共通点・相違点について包括的に整理するという研究計画に基づき、本研究課題を実践した。整理のためにパーソナル・コンピュータ(以下パソコンと略す)を利用し、下記のように研究を進めた。 『カンタベリー物語』Gg.4.27写本のデータ入力は、平成21年度に始まり平成22年度においても進行中である。『カンタベリー物語』Hengwrt写本とEllesmere写本およびBlake版・Benson版などのテクストが容易に比較できるようにパソコンでテクスト処理をしている。平成22年度の研究において、Gg写本の写字生は頻繁に過去分詞を示す接頭辞y-を落としたと言われるが、接頭辞y-を付けているところもあるということが分かった。そのほかの点も含めて、各テクストを行単位で出力し、単語が共通するところと違うところが一目で把握できるような冊子とアルファベット順に並べた語彙のインデックスを、平成23年度に作成する予定である。
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