研究概要 |
本研究の目的は、ジェフリー・チョーサーの写本と刊本の言語について、コンピュータを利用し、その英語の語彙・統語・文体を総合的に研究し、チョーサーのtextual criticismに貢献することにある。 本研究では、『カンタベリー物語』のGg写本と他の写本やテクストとの間に生じた異同の問題を取り上げる。Hengwrt写本とEllesmere写本は『カンタベリー物語』のみの代表的写本であるが,Gg写本はチョーサーの最も初期に書かれた全集と言われる。これは,Dd(Dd.4.24)写本やコーパス(Corpus)写本と同じく15世紀初期に書かれたものであり、一部欠落部があるもののチョーサーの重要な写本の一つである。 『カンタベリー物語』Gg.4.27写本のデータ入力を行い、『カンタベリー物語』Hengwrt写本とEllesmere写本およびBlake版・Benson版などとその共通点・相違点について包括的に整理するという研究計画に基づき、本研究課題を実践した。整理のためにパーソナル・コンピュータ(以下パソコンと略す)を利用し、下記のように研究を進めた。 『カンタベリー物語』Gg.4.27写本のデータ入力をすすめた。『カンタベリー物語』Hengwrt写本とEllesmere写本およびBlake版・Benson版などのテクストが容易に比較できるようにパソコンでテクスト処理をしている。Gg写本の写字生は頻繁に過去分詞を示す接頭辞y-を落としたと言われるが、接頭辞y-を付けているところもあるということが分かった。以下の例のように、下線部ではわざわざ接頭辞を有標化して"I-"と表しているところは特徴的である。 HG:7r GP 0398 Ful many a draghte of wyn/hadde he drawe EL:5r GP 0398 Ful many a draughte of wyn/had he drawe BL:GP 0398 Ful many a draghte of wyn hadde he drawe BN:GP 0396 Ful many a draghte of wyn had he ydrawe Gg写本 0396 fful manye a drau〓t of weyn hadde he I-drawe
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