本研究においては南部文芸復興期を代表する二人の文学者、アレン・テイトとウィリアム・フォークナーを考察の対象として取りあげ、前者の伝記作品『ストーンウォール・ジャクソン伝』と後者の小説『行け、モーセ』を、そこにどのような南部の文化的自画像が描きだされているかという観点から検討した。テイトのジャクソン像の造型にはこの詩人のモダニズム的不安からの脱却の夢が投影されていることを、またフォークナーは黒人女性モリー・ビーチャムの造型のなかに南部の伝統的な文化的自画像を書き換える力をはからずも付与したのではないかということを指摘した。
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