17世紀後半のイギリスの書物と社会の関係を、書物史(Book History)の要素から解明することを目的とする本研究において、平成21年度は(1)サブスクリプションによる出版制度、(2)書物の中の版画が持つ効果、(3)書籍商Richard Chiswellと著者、さらには彼の出版物の購読者層についての検討を中心に進めた。成果は"Anthony Wood's Athenae Oxonienses and the Subscription Publication in Seventeenth-Century England"と「書物史の要素から見るSir William DugdaleのHistory of St.Paul's in London(1658)」の2本の論文にまとめ、発表した。年度途中で2名の研究協力者を病気のために失うこととなり、非常に困難な状況となったが、新たな研究協力者の確保を急ぎ、特に海外の研究協力者との連携を強化するよう努めた。研究計画の遂行には未だ不完全な体制ではあるが、イギリスから研究協力者George Southcombe氏(オックスフォード大学)を招聘し、「書物史の要素から見る17世紀イギリスの出版物」と題する国際研究集会を山梨県甲府市において開催し、研究発表を行うなどした。
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