本研究は、ポストコロニアル的観点から、19世紀から20世紀英国で出版された文学作品挿絵における、日本中国中東にいたるオリエント表象の分化と変遷を、政治(帝国主義と植民地主義政策)社会(オリエント諸国への西洋観)および、文化(ジャポニズムに代表される美術様式や万博などにみられる西洋の東洋文化理解)を通じて検証する学際研究であるとともに、そのアジア表象と20世紀日本版西洋文学挿絵の関連影響を検証する日英比較研究である。 本年度に行った研究によって得られた新たな成果は、次の3点である。 1.海外調査:英国ケンブリッジ大学図書館等での調査研究・資料収集 (1)18~20世紀までの英国版挿絵本を調査。文学作品に描かれたオリエント図像の中でアンデルセンにテーマを絞り、調査、図像資料調査、複写、収集。 (2)20世紀挿絵画家の作品で、ジャポニズムあるいは日本中国的な図像としてチャールズ・ロビンソン、ハリー・クラーク、エドモンド・デュラックなどの画像研究調査、画像複写 2.連携研究者との研究:ケンブリッジ大学Gillian Beer教授・イースト・アングリア大学Clive Scott教授と協議(夏季) 3.成果発表論文 (1)「『ガリヴァー旅行記』図像とオリエント-英物挿絵に見る日本表象を中心として-」『十八世紀イギリス文学研究第4号交渉する文化と言語』開拓社、2010 (2)「英版『ガリヴァー旅行記』図像における中国表象」『日本ジョンソン協会年報』第34号(2010) (3)「フィリッパ・ピアスの『トムは真夜中の庭で』とイギリスの自然」『英語圏諸国の児童文学Iテーマと課題』ミネルヴァ書房、2011
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