本研究の目的は、トニ・モリスンの文学テクストにおけるおとぎばなしや民話の深層構造を明らかにすることである。テクストの深層に隠された物語構造を見いだし、それがモリスンの文学世界とどのような関係をもつのかを分析することを試みた。隠された物語構造は表面的な物語風景を逆転させ、新しい解釈の世界へと導いてくれる。 平成25年度の研究は以下のとおり、ほぼ研究実施計画どおりに実行された。 1. 文献のテクストの読み込み:本年度も、前年度どおり、必要な文献を読み進めた。 2. 25年度末、博士予備論文の執筆を終え、当該研究機関に提出した。 3. 学会シンポジウム:24年4月22日に開催された日本アメリカ文学会中部支部第29回大会(於愛知淑徳大学)において、「ハーレム・ルネサンスのアフリカ系女性作家再考」と題するシンポジウムを企画し、司会・講師を務めた。3名のアフリカ系アメリカ文学研究者を講師に招き、1920年代黒人女性作家とモリスンら現代作家たちとの影響関係について討論した。また、10月27日に開催された日本英文学会九州支部第65回大会(於九州産業大学)において、「トニ・モリスンの描くアメリカ―植民地時代から公民権運動まで」と題するシンポジウムの講師となり、モリスンの短編小説「レシタティーフ」について発表した。いずれのシンポジウムにおいても、好意的な評価を得た。 4. 25年 3月23日から30日にかけて渡米し、ニューヨーク公立図書館、ションバーグ黒人文化研究センター等において文献調査を行った。
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