アーサー王物語の出版史において看過され、未だ校訂本として定本のない作者不詳のBrittains Glory:History of King Arthur(1684年出版)(唯一ケンブリッジ大学モードリン・コレッジ図書館にユニーク・コピーが現存する。)に詳細な注解を付け、本作品のテクスト編纂と公刊を行うことを、本研究は課題としている。 本年度は、モードリン・コレッジ所蔵本からマイクロフィルムの提供を受け、誤植、脱字、句読点、段落構成、本文の誤りなど、基本的な編集作業を行った上で、ディプロマティック・テクストを作成した。今後は、本文校訂を含めた正確なテクスト編集の作業と注解を行った後、所蔵先の許可を得た後に、WEB上で公開する予定である。 また同時に、Martin Parker著The most admirable Historie of That most Renowned Christian Worthy Arthur King of the Britaines(1660年出版)のテクストもフィルムで入手し、ディプロマティック・テクストを作成した。本テクストも、併せてWEB上に公開の予定である。 これら2種のテクストが編纂されることにより、1634年から1816年までの2世紀におよぶアーサー王物語の受容空白期の一端を埋めることが可能となり、アーサー王物語の受容ぶりを通して、スチュアート王朝後期の社会文化的状況を記述することができる。
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