本研究は申請者が企図する「アーサー王物語の受容から見るイギリス社会文化史研究」の一端を占める。この通史的テーマのもと、本研究は、アーサー王物語出版史において看過され、未だ校訂本として定本のないBrittains Glory : History of King Arthur(ケンブリッジ大学モードリン・コレッジ図書館にユニーク・コピーが現存。)に詳細な注解を付け、本作品に初のテクスト編纂と公刊を行うことである。 本研究の2年目として、モードリン・コレッジ所蔵本Brittains Gloryから本文校訂を含めた正確なテクスト編集の作業と注解を行い、それを活字化し、出版・公開した(論文参照)。 また、Martin Parker著The Most Admirable Historie of That most Renowned Christian Worthy Arthur King of the Britaines (1660年)からディプロマティック・テクストを編集・作成し、最終年度に公開する準備を整えた。 以上2種のテクストの編纂により、1634年から1816年までの2世紀におよぶアーサー王物語の受容空白期の一端を埋めることが可能となり、アーサー王物語の受容ぶりを通して、ステユアート王朝後期の社会文化的状況を記述する準備を整えることができた。
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