アーサー王物語は、1634年に出版されたスタンズビー版『アーサーの死』を最後に、およそ200年余りの間、空白の期間を迎えたとされる。しかし実際には、The most admirable Historie of That most Renowned Christian Worthy Arthur King of the Britainesが1660年に、またBrittains Gloryが1684年にそれぞれ出版され、スチュアート朝後期の政治的・文化的言説空間にアーサー王伝説が配置された。 本研究は、未だ定本が無いこの2つの作品のテクストを編集し、注解を加え、併せて典拠の解明を行い、近代初期(特に、17世紀後半)におけるアーサー王物語の文化的、政治的機能を明らかにするものである。掲げた課題のうち、テクストの注解と公表を行い、典拠はほぼ解明を終えたが、この作業に時間を要したためにアーサー王伝説の受容問題を17世紀の文脈の中で、十分に解明・解釈するところまで行かなかった。今後継続して研究の対象とする。
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