研究課題
今年度は本研究の最終年ということもあり、プロジェクトメンバー各自が成果発表に向けて力を注ぎ、主たる会議は2回に留めた。2011年11月8日に行なった1回目の会議には、ギリシア神話を題材にしたバロック・オペラの専門家で俳優・ソプラノ歌手・演出家としてパリで活躍するマチルド・エチエンヌ氏を迎え、「ギリシア、ルネッサンス、バロック時代の演技」という題目で講演をしていただき、バロック時代の演技表現の掘り起こしをとおして古典の美学的意義を考察する機会を得た。この講演には学内外の学生・院生から専門家まで50名を超える聴衆が集まり、講演後には活発な質疑応答が展開された。2回目の会議は2012年2月9日に行ない、堀と外岡がそれぞれの研究成果を発表した。本研究ではギリシア劇・神話の現代化を主として英米アイルランドの現代詩劇・演劇などの舞台作品や脚本の研究に絞り、その政治的・社会的・文化的意味や美学的意義を探ることを目的としてきた。一方でギリシア神話は、サブ・カルチャーにおいても、アニメやゲームなどにキャラクターやプロットが自由かつ表層的に流用されることで、ネットワーク・メディアを通じて国際的な流通を見せてもいる。その現状を前に、神話の現代化とはどこまで自由な表現が可能か、何を規準として作品の評価を行なうのか、その許容範囲をめぐって「翻案」という問題を扱うことのむずかしさが浮上する。とはいえ、洋の東西を問わず、多様な文化のなかにギリシア神話が浸透し、文化を豊かにしていることはたしかである。古典神話が現代の文化や社会を考えるうえで重要な役割を果たしている現代において、そうした多様性をふまえたうえで古典の現代化の諸相を学問的に分析するという本研究の意義をあらためて確認した。
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Comparative Theater Review
巻: Vol.11 No.1 ページ: 52-64
アメリカ文学
巻: (近刊)
Journal of The Kafka Society of America
巻: 3rd-34th year ページ: 80-89
青山経営論集
巻: 46巻別冊 ページ: 32-46