研究概要 |
一見荒唐無稽な先住民の口承民話に社会学的、科学的整合性を解明するとき、著名な遺伝子学者で、環境問題運動家としても活躍するカナダのデイビッド・スズキの見解が参考になる。科学者として地球破壊を深刻に受け止め、先住民の叡智に注目したスズキは、地球規模の破壊を救う道は「準宗教的」になることであると語る。「我々のジレンマは情報や科学技術の才能の欠如ではない。むしろ問題は、残された自然との関係の気づき方であり、物事の壮大な相,関性、仕組みにおける我々の役割に気づくことである。」またスズキは、「生命愛」を心に抱くことに注目する。私たちはDNAや進化を通して大地の動植物とつながっている。「父なる空、母なる大地、兄弟姉妹なる動植物」と語る北米先住民の世界観が、実は科学的な根拠に裏付けされた先見性を持つ部族の知恵であったこともわかる。環境正義とは、人間が起こした間違いを正すということである。地球に残した数々の環境破壊は人間の責任である。人間だけが特別扱いをされていると思っているかもしれないが、それは間違いである。今回の東日本大震災で起こった福島第一原発事故がそれを明白に語っている。 *2010年7月11日、第17回東京国際ブックフェアに招聘され、吉岡忍、西木正明、中村敦夫と共に「環境と文学-いま、何を書くか」のシンポジウムにパネリストとして参加。「環境正義と文学」の関係をカナダ先住民民話と環境正義を扱うマーガレット・アトウッドの最新作を元に発表。 *2010年9月24日、国際ペン東京大会で「文学にみる環境正義と現代的意義」のセミナーを組織。司会を務める。 *2010年12月、明治学院大学国際平和研究所が組織する研究会で、1950年代にオーストラリアの先住民聖地マラリンガで行われたイギリスによる核実験で被害者となったアボリジニを描いた戯曲を環壌正義の見地から発表。
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