本研究の目的は、「エトリックの羊飼い」として知られ、ロマン主義期を代表するスコットランド詩人・作家ジェームズ・ホッグを取り上げ、19世紀初頭の都市を中心とした著しい近代化の中で、スコットランド固有の農村文化が保全及び再構築が試みられたかを探求することにある。 研究最終年度にあたる平成24年度は、過年度に行ったスコットランド国境地帯への実地調査を始めとする資料・文献分析の成果を踏まえ、これまでの研究成果をまとめることに費やした。当初はグラスゴーで開催されるThe James Hogg Societyの定期大会に参加する予定であったが、学会の都合により延期となった。したがって、当初の予定していた、Blackwood's Edinburgh Magazineを初めとするエディンバラ出版文化において醸成された「エトリックの羊飼い」像がいかに大西洋を越えて北アメリカの出版文化に受容されたのかという、19世紀初頭の出版文化の動態とHoggの作品の近代性を明らかにすることを目的とした研究をまとめ、平成25年出版予定の論文集で発表する。 また、当初研究資料として検討していたThe Three Perils of Man校訂版の出版が延期されたため、研究期間中の分析が間に合わなかった。したがって、下半期においては方針を変更し、John Gibson LockhartのPeter's Letters to His Kinsfolkを中心として、Hoggとエディンバラ出版文化及びスコットランド啓蒙主義が表す近代性との関わりについて考察・研究をまとめ、関連学会の論文集で発表、及び、平成25年度にミュンヘンで行われる国際学会で発表する予定である。 その他、関連学会・研究会でホッグの作品について意見交換や資料収集を行った。
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