研究概要 |
平成21年度ではこれまでのグレイと古詩に関する研究成果を踏まえて、John Collis(The Celts,1999)、Eric HobsbawmやPrys Morgan(The Invention of Tradition,1983)、またLinda Colley(The Britons、1992)などを参照し、ウェールズのケルト民族起源論とナショナリズムの影響を18世紀後半からロマン派の詩人にかけて概観した。 まず、ケルト民族起源論に関して、Henry Rowlands(Mona Antiqua Restaurata,1723)やAylett Sammes(Britannia Antiqua Illustrata,1676)などの第1次資料を整備した。18世紀ウェールズにおける「ケルトの再発見」と当時の好古的な知識がグレイやメイソンの作品に与えた影響を明らかにし、いかに作品に活用したかを民族意識や国民意識と関連させて考察した。 成果として、D.Walford編Wales and the Romantic Imagination(Aberythtwyth,2007)の書評をロマン派学会の機関紙に公表した。この研究書は18-19世紀のケルト言説や、イオロ・モルガニッグの活動、イングランドの詩人によるウェールズ表象などを文化だけでなく政治的社会的背景から分析した論集である。ロマン派にかけてのケルト趣味の展開と、南北ウェールズの相違などウェールズ独自の視点を持ち新しい知見に富む。また年度末には、William Cowperの"Boadicea"におけるケルト趣味についてグレイ、メイソンと比較し、影響と独自性を考察し発表の準備を行った。 出張では、大英図書館とオックスフォード大学図書館の貴重書と電子文献を閲覧し資料を収集した。
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