2年目にあたる今年度は、フランスやアメリカから移入されたレヴューが、1910年代から20年代にかけての時期に、いかにイギリス的な特徴を持つレヴューに変化していったかという点に焦点を当てながら研究を行った。まず、1年目の資料調査により明らかになった点を一部、「『寄席』のレヴューから『劇場』のレヴューへ」と題して文章にまとめた。これは、ミュージック・ホールと劇場の間に制度的な違いを設けるイギリスの伝統的な劇場法に目を向けることにより、この国に特有のレヴューの発展過程を説明したものである。イギリスに特有の発展過程とは、言い換えれば外来のレヴューのイギリス化ということになるが、本年度においては、具体的には、国際的に活躍していたプロデューサーのチャールズ・コクランが新進気鋭のイギリス人劇作家ノエル・カワードを台本作者として起用し、ロンドンで上演した『ダンスを続けて』(1925年)を中心に、上記のテーマの研究を行った。レヴューの場合、スクリプトとして活字になっているものがきわめて少ない上に、その関連資料も日本国内ではほとんど入手困難である。昨年度と同様、今年度もロンドン出張の機会を得て、複数の図書館を訪問し、上演台本、劇評、広告、舞台写真等、初演当時の様子を伝える種々の資料を収集した。この調査の具体的成果は、勤務先の紀要に「チャールズ・コクランの『ダンスを続けて』-イギリス1920年代のレヴューに関する覚え書き-」と題して掲載した。
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