今年度も昨年度に引き続き、フランスやアメリカから移入されたレヴューが、1910年代から20年代にかけての時期に、いかにイギリス的な特徴を持つレヴューに変化していったかという点について研究を行った。今年度は特に、イギリスのレヴューの発展に大きく貢献したと言われるプロデューサーのチャールズ・B・コクランの仕事に的を絞り、ロンドンの大英図書館が所蔵する上演台本や、ヴィクトリア&アルバート・ミュージアムのコクラン・コレクション、そしてニュースペーパー・ライブラリー等で収集した劇評などを調査した。その結果、コクランがイギリス独自のレヴューを創造しようとして様々なスタイルの上演を試みていたことが具体的に判明した。例えば、Odds and Ends(1914年)という小劇場向けのレヴューの場合、バックステージものの体裁をとっており、フランスのレヴューをイギリスで上演することの困難さをメタ演劇的に表現していること、その一方で、フランスのレヴューを翻案したAs You Were(1918年)のように、レヴューと称しながらも現代のミュージカルに近い、一貫したストーリーを持つ統合型のレヴューになっているものもあったこと等がわかった。また、コクランは古いタイプのミュージック・ホールであったロンドン・パヴィリオンを、より知的で洗練された観客向けの劇場に改築し、レヴューを何本か上演していたが、この劇場で上演していたのはレヴューの2つのタイプ、すなわち大劇場における華やかなレヴューと小劇場における風刺的なレヴューの2つのタイプの「折衷型」であったことなど、コクランの行った数々の革新的な試みを具体的に確認することができた。このロンドン・パヴィリオン劇場のレヴューについては、2011年12月18日に、日本英文学会関西支部大会で、「両大戦間期のウェストエンドにおけるイギリスのレヴューの成立」と題して発表した。
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