研究概要 |
本研究代表者は、「Banqueting as a Cultural and Social Practice in Shakespearean Drama」(ロンドン大学、2005年)で、ルネサンス期の英国文学における"banquet"の実践の社会的文化的意味について詳細に分析した。本研究では、これまで進めてきた研究をさらに発展させるために、様々な社会階層で実践された宴会という料理の諸形態を詳細に分析し、当時の文学や演劇といった文化生産への影響を検証する。 本年度も昨年度の英国における調査対象「I.料理本や家政学書によって記された調理実践としての宴会」に引き続き、「II.建築構造的な視点から、空間実践としての宴会」に焦点を当て、国内外の図書館や博物館を中心に資料を収集し、国内外の研究者と情報交換を進めた。英国においては、バンケットルームやレシピ本、手紙などの一次資料の収集・調査・研究をさらに進め、バンケットという宴会空間とエンブレム表象との関係に注目し、特に1600年前後におけるバンケットの文化的歴史的背景の調査研究を実施した。 本年度は、前年度までの成果をまとめながら国内外の学会で成果を発表する準備を始め、また関係する学術機関誌への投稿を開始した。「高大連携の取り組みから-国際理解を取り入れた英語教育-」は、英国文化研究の成果を、地域貢献の一環として教育的観点から発表したものであり、またバンケットとエンブレムの関係を中心とした研究成果を次年度に発表できるように、国際エンブレム学会への応募を行い、大会での発表の準備を進めた。「Artificial Exorcism : The Theatre of Nothing in Ql King Learでは、これまで扱っていなかったシェイクスピアの悲劇作品においてバンケットの空間表象のエッセンスとも言える「無」と「演劇性」の関係について考察した。「Sanitising Ajax, or the 'Privy' : Falstaff's Festive Space and the Government of the Body in Henry IV」では、シェイクスピアの『ヘンリー4世』における宴会表象を分析することにより、祝祭空間においてプライバシーと身体感覚がどのように結び付けられているかを明らかにした。
|