本研究では、「アメリカ格差社会とアフリカ系アメリカ人のサブカルチャー」をテーマに、アメリカにおける格差社会の諸問題について、社会的弱者とされるマイノリティー・グループ、ことにアフリカ系アメリカ人の視点から、彼らが発信する、権威主義に対抗するサブカルチャーとしての文化表象を検証することを研究目的としている。 本年度は昨年度に引き続き、1980年代の終わり頃から21世紀初頭にかけて、アフリカン・アメリカンの文学と文化に大きな影響を与えたポスト・ソウル世代の作家の1人、コルソン・ホワイトヘッドに注目するとともに、奴隷制の時代からオバマ大統領誕生にいたるポストレイシャルの時代までのアフリカ系アメリカ人の音楽がもたらした社会的骸響について、人種、階級の視点から論じた。 研究成果の公表として、2011年6月に山口大学で開催された中四国アメリカ文学会支部:第40回大会でのシンポジアム「アメリカ文学と音楽」において、アフリカ系アメリカ人の音楽・文学に見る人種意識の変遷-ポスト・ソウル世代の作家、コルソン・ホワイトヘッドの『サグ・ハーバー』を中心に」というタイトルで発題した。さらに、2011年度(第29回)広島女学院大学公開セミナー第2回(10月15日)で「アフリカ系アメリカ人の音楽・文学を通して見る人種意識」をテーマに講演を行ない、科学研究費補助金による研究成果を、地域社会に公表する機会とした。なお、これらの発表、講演をもとに、「アフリカ系アメリカ人の音楽・文学に見る入種意識の変遷-奴隷制からポスト・ソウル世代にいたるまで-」という論文を執筆し、『ことばが語るもの』(英宝社2012年3月刊行)に収録された。
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