21年度は、二つの研究目標があった。第1は、環境をテーマとするアメリカ文学から出発してさらに現代英語圏作家に拡大して環境文学作家と作品の見取り図を作り、その中で特に汚染を焦点化した作品について考察すること。第2は、環境学の幅広い知見により作品の場所の伝統的風景と汚染による変化の関係を把握し、風景構築と場所の間テクスト性、作家の場所感覚とのかかわりなど広範な問題を考察することであった。 第1については、『オールタナティブ・ヴォイスを聴く--エスニシティとジェンダーで読む現代英語環境文学』のタイトルで共著を企画するなかで、テーマI「汚染と身体」のなかで、本研究課題である汚染と身体の関係について、6つの作品と4つの研究書など紹介記事を検討中である。なおこの共著では73作の環境文学と50冊のエコクリティシズム研究書を網羅し、作品解説と研究動向を一覧できる参考書を2011年春出版予定で準備している。代表を務めるエコクリティシズム研究会との共同作業の中で、本研究課題の研究も遂行していく。21年度は全体構想などその準備に充てた。 なお当初計画でアメリカでの西部フィールドワークを予定していたが、予算の関係もあり、第2の目標達成のため、21年10月フィラデルフィアで開催されたエドガー・ポー国際大会に参加し、ポー作品の風景と場所の関係を発表し、かつフィラデルフィア市街地と作品の場所を調査した。都市を場所とする先駆的予言的環境テーマがポーの作品にうかがえた。以上の研究調査と過去の研究を総合して、別紙の研究成果を出版した。
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