本研究の目的はジェイムズ・シャーリーの『宮廷の秘密』の二つのテキストである手書き原稿(manuscript)と1653年に出版されたテキストとの比較を通して、作家ジェイムズ・シャーリーの作劇に迫り、さらには作家、出版業界、劇団の力関係の考察にある。手書き原稿には削除、修正、加筆があり、その版を数えるとテキストは三つ存在することとなる。精査な比較を通し、同じ言葉が違う意味合いで使われていることがわかることから、作家シャーリーが、何度も原稿に手をいれる作家であったことは明らかである。シャーリーの特徴が、印象深い主人公にではなく、会話の積み重ねによって構築される人間対人間のドラマにあることも読み取れた。『宮廷の秘密』が収められているSixNewPlaysの六作品一作ずっに書かれた献辞は、劇場閉鎖前後の時勢を反映するものであり、作家シャーリーと出版業者HumphreyMoseleyとの密接な関係をも表している。
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