『イリアス』はギリシア最古の叙事詩である。ルネサンス以降の「ヨーロッパ」人は、ギリシアを文化的な「父」と設定し、ヨーロッパという概念の中核として使った。そのことはギリシア最古の叙事詩研究を長期にわたって盛んなものとしてきたが(もちろんヨーロッパで)、同時に、同叙事詩理解を妨げてきたことも否めない。本研究は、研究代表者が、ヨーロッパ文化伝承の外にあるという自覚をもってすれば、従来ヨーロッパ人であるが故に理解を妨げられて部分に光があてられる、ということを示そうとした。その成果は着実に上がりつつある。
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