研究概要 |
本年度は研究目的に従い、以下の研究を行った。1)ギヨーム・ギヤール『王朝系譜』のテキストを、フランス国立図書館に所蔵されているフランス語写本5698番のマイクロ・フィルムと、J.-A.Buchonによる校訂版(J.-A.Buchon, Branche des royaux lignages, chronique metrique de Guillaume Guiart, Paris, Verdiere, 1828)ならびにN.de Wailly et L.Delisleによる部分的な校訂版(N.de Wailly et L.Delisle, La Branche des royaus lignages, par Guillaume Guiart, dans Recueil des Historiens de la France, t.22, 1865, p.171-300)と比較検討した。2)この写本と校訂版の照合を通して、ギヨーム・ギヤール『王朝系譜』の上記校訂版に含まれる間違いを収集し、それらが中世フランス語の辞書(F.Godefroy, Dictionnaire de l'ancienne langue francaise et de tous ses dialectes ; A.Tobler et E.Lommatzsch, Altfranzosisches Worterbuch : W.von Wartburg, Franzosisches Etymologisches Worterbuch)においていかに扱われているか、いかなる影響を語彙研究にもたらしたかを文献学的に調査した。3)さらに、ギヨーム・ギヤール『王朝系譜』に含まれる、歴史的・地理的に注目すべき単語・表現を収集し、この作品の意義を裏付ける点を強調し、フランス語史ならびに言語地理学における従来の知見を補完した。4)関連する中世フランス語作品を収集し、それらを批判的に検討するとともに、地方語の問題にかんしても言語地理学の成果を活用すべく、研究書・論文を調査した。その研究によって『王朝系譜』の著者の出身地であるオルレアン地方に焦点を当て、その他の地方も考慮しつつ地方語を浮き彫りにした。
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