ディドロによる「生命学」」(sciences de vie)の分野での『百科全書』項目寄与の具体像を明らかにし、18世紀フランス啓蒙思想におけるその射程と意義を、申請者が進めている本文批評的観点から実証的に示す。これにより、いまだ解明されない部分の多い『百科全書』期のディドロの思想的発展に関し、基礎的研究に立脚した新しい解釈を打ち出す。以上が本研究の目的である。 今年度は、ディドロによる「生命学」」の分野での『百科全書』項目寄与の具体像を明らかにし、18世紀フランス啓蒙思想におけるその射程と意義を明らかにすべく、以下の項目を実施した。 ◆『百科全書』本文生成、分類体系、参照項目研究 デジタル処理化された『百科全書』パリ版本文(慶應義塾大学所蔵パリ版)を底本にし、これまでの申請者の研究蓄積を基にした、さらに精度の高い解析に取り組んだ。研究成果は、申請者が監事を務める国内研究者の共同研究会である「百科全書研究会」を始め、国内外の学会(日本フランス語フランス文学学会秋季大会ワークショップ)、研究会(ボルドー第3大学「モデルニテ」主催国際研究会)で公開、論文にして発表した。 ◆材源研究 分析対象となる資料は復刻版のある『サイクロピーディア』を除けば国内に所蔵する図書館はない。すでに申請者はマイクロフィッシュやデジタル資料などで中核的な資料については所蔵しているが、一部未所有のものに関しては、国内および海外(パリ)にて資料調査を行なった。
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