本研究は、ヘレニズム文学の至宝、カリマコスの諸作品を研究し、(1)カリマコス詩歌の文学的意義を考察すること、(2)カリマコスを中心とするヘレニズム文学の特質について考察すること、(3)カリマコス並びにヘレニズム文学が後代に与えた意義を究明すること、主としてこの三点に焦点をあてて研究することを、その目的とする。 22年度は、カリマコスの作品中、主として神々の讃歌集を翻訳することに力を注いだ。カリマコスは800作余りの作品を記したことが伝えられているが、今日ではわずか6編の神々への讃歌集と、祭りや風習の原因・起源を語る『起源物語』、それに風刺詩とその断片が残るのみである。22年度はこのうち、讃歌集を翻訳することにより、この作品がカリマコス作風の特徴をきわめてよく表しており、緻密で文学技巧を駆使した薫り高い讃歌集であることが考察された。また、カリマコスが活躍した紀元前4-3世紀の、アレキサンドリアの宮廷を舞台にした文学サークルの特質についても、研究が行われた。22年10月には、イギリスからジョイス・レノルズ博士を招待し、ヘレニズム時代の墓碑銘や、それらから考察される当時の社会背景についての講演会、並びにシンポジウムを開催した。 23年度は、主として『起源物語』に関する研究と、その翻訳を行った。また、カリマコスと同時代にアレキサンドリアで活躍し、文学サークルの仲間として影響を与え合ったテオクリトスについての研究も行った。
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