本研究は、ヘルメス的伝統のドイツ近代(18・19世紀)における影響を明らかにすることを目標とする。 本年度の研究計画は、αヘルメス的伝統の基本的性格をいわゆる『ヘルメス文書」の分析を通して明確にする一方で、この伝統のディオニュソス・オルフェウス教、さらにはピュタゴラス教団との思想的文化的側面との関わりを研究する。βパラケルススの隠秘哲学(Philosophia occulta)および魔術論について研究する。Yドイツ・ロマン主義期におけるヘルメス的伝統の影響を、E・T・A・ホフマン、ティーク、アイヒェンドルフなどを対象として研究する、であった。αの研究を通しては、ドイツ古典主義(シラー、ゲーテ)とヘルメス的伝統との関わりを、とりわけバラード論に即して明らかにすることができた。βに関する研究では、メスメリズムと魔術との関わりを明らかにする一方、これらとのフロイトの精神分析研究との接点を研究した。フロイトの無意識が、キリスト教カバラに伝統的な霊魂論に由来することをひとつの発見として得た。γに関しては、ロマン主義におけるエジプト熱、イシス信仰に対する関心を考祭し、これがヘルメス的伝統と密接に関わることを明らかにした。これらの研究成果は、口頭(4件うち招待講演3件)と論文(5件うち査読論文2件)にて公表した。
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