研究課題/領域番号 |
21520336
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
石川 知広 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (50145645)
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研究分担者 |
大久保 康明 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (70168897)
小川 定義 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (40268967)
藤原 真実 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (10244401)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | フランス文学 / フランス語 / 自己言及性 / 近世 |
研究概要 |
主にパスカルに焦点を当てた過去2年間の研究を踏まえ、モラリスト文学およびそれと密接な関連を有するフランス近世小説における心理描写を、自己言及性の視座に立って分析・考察した。また、その延長線上で、ラシーヌの悲劇『フェードル』の主人公フェードルの心理分析を行った。(石川) これまでの研究に引き続き、本年度もモンテーニュの著作『エセー』に即して自己言及性の分析研究を行った。モンテーニュにおける高度の自己言及性の様態として、特に言語的所与、またそれゆえの制約等も含んだ形での跛行的叙述の特異なあり方に注目して分析を進めた。(大久保) 初年度に引き続き、テーマに即した言語学的分析を遂行したが、特に、フランス語の動詞接頭辞RE-を扱った。これは、繰り返し、後方性、強調などの意味を持つが、繰り返しにもいろいろな細分がある。中世語では、動詞から切り離され助動詞にも付加する自由度を持っており、かつ、現代語の話し言葉では、動詞に付くものの、独立した機能辞主要部ともとれる性質を持つ。つまり、古い時代の特性をいまだに継承しているといえる。こうしたRE-の通時的変化の理由を、資料に即して考察した。(小川) これまでプレヴォー、ディドロ等に関して行ってきた研究成果をふまえ、近年発掘研究が進められつつある18世紀の作家ヴィルヌーヴ夫人(Gabrielle-Suzanne de Villeneuve, 1685-1755)による元祖『美女と野獣』について、そのテクストの自己言及的構造の観点から分析し、この作品が、後続の多くの「美女と野獣もの」の出発点となり得た理由を考察した。(藤原)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究のアプローチはまだ未開拓の部分が多く、引き続き準備的研究および方法論的模索に重点を置いて研究を進める必要があるものの、24年度は、一部具体的な研究成果にも結実した。しかしながら、全体の見通しを改めて調整する必要は残存する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き研究代表者および分担者がそれぞれの分野で自己言及性の諸様態の探求を続行するとともに、各研究を統合する新たな視点の提示と深化を図ることに力を注ぐ。本年度は最終年度であることから、本研究課題をテーマとする研究会やシンポジウムを企画運営し、より多様な視点から研究のまとめと情報発信を行う。
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