研究概要 |
ハラー『生理学原論』の読解を進めたが、第一巻全部を読み通すことはできなかった。9月に「日仏啓蒙・『百科全書』研究集会」が慶應大学で開催され、そこでRepenser Albrecht von Haller comme 'encyclopediste' : Son intervention erudite, journalistique et scientifique dans le Supplement a l’Encyclopedieと題する報告を行い、同名の論文を3月刊行の『『百科全書』・啓蒙論集』第二巻に発表したためである。ハラー『生理学原論』の代わりに、晩年に彼が寄稿した『百科全書補遺』項目を読み込み、関連する研究書・論文も読んで、論文を書くことに時間をかけたが、そのおかげで、単なる生理学者に留まらないこの博学の知の巨人(ジャーナリスト)について、彼の研究スタイルや知のネットワークなどを深く知ることができた。ハラーはラテン語、フランス語、ドイツ語で文章を書いており、研究は母国であるスイスやドイツで盛んだが、今回ドイツ語でいくつか研究書・論文を読み、研究情況をフォローするだけでなくドイツ語の読解力も高めることができた。また、『百科全書補遺』の彼の生理学項目からも、『生理学原論』同様、それが同時代あるいは少し前の非常に多くの生理学論文・著作の間テクスト的集成であることを理解できた。 当初の予定では、ディドロがハラーのどの部分を取り出し間テクスト的に『生理学要綱』を執筆したか、を報告書で明らかにする予定であったが、『生理学原論』の読解が進まなかったこともあって、それは断念した。その代わりにHPを作成し、そこにロシア・サンクトペテルブルグにある写本を元にした『生理学要綱』の暫定的校訂版を報告書として掲載し、世界中の研究者がアクセスしダウンロードできるようにした。
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