平成22年度の研究実績として下記の研究発表と講演を行った。 1)研究会「ヒューマンプロジェクト」(6月19日、慶應大学三田校舎)において、「スローターダイクの人間論とハビトゥス」という論題で研究発表を行い、ダーウィニズム以降の人間学のあり方を論じた。2)国際ゲルマニスト会議(8月2日、ワルシャワ大学)において「中世文学とハビトゥス」という論題で研究発表を行った。これまでの成果に加え、現代のハビトゥス論がパノフスキーによる中世のイコノロジー(図像学)研究から発展したものであることを論じた。この成果は学会報告書で公刊予定である。3)国際エックハルト学会(9月11日、マインツ)において「異端審問と托鉢教団」という論題で研究発表を行い、異端問題におけるナショナリズムの介在について論じた。4)科研費シンポジウム「ヒューマンプロジェクト」(11月5日、慶應大学三田校舎)において、「第二の天性の克服」という論題で研究発表を行い、アリストテレス哲学が中世習慣論に与えた影響を論じた。5)科研費コロキウム「ヘテロトピア」(11月7日)において、「ドイツ中世文学におけるヘテロトピアの言説」という論題で、中世文学に異質空間がもつ意味を論じた。6)国際宗教学シンポジウム「仏教」(11月25日、バンコク・チュラロンコン大学)において「和辻哲郎:文化的人間学と仏教的思考」という論題で研究発表を行い、和辻哲郎の人間論について論じた。この成果は学会報告集で公刊予定である。7)平成23年1月に単著「マイスター・エックハルト生涯と著作」(創文社)を出版し、その中で中世神秘思想の鍵概念「離脱」が中世の習慣論によって形成されていることを論じた。8)論文「エクフラーシス--中世ヨーロッパ文学における絵のない絵本」において、中世の写本における書字媒体と挿絵の関係について論じた。
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