「研究の目的」に挙げた問題設定の枠組みに従い「流線形デザイン」という主題から、「障害因子一般を排除する方途」という表象の拡大を見た。その中で明らかになった「優生学」(「障害因子一般を排除する方途」の「理念的背景」)という概念装置に力点を置いて、20世紀市民生活の全般にわたる領域について、その影響関係を明らかにした。 要点は二つである。 その一。こうした20世紀固有の機械と身体の相互関係の中から、それまであった有機体的一体論としての身体表象が、「部品」の集合体という身体表象に解体・再編成されてゆく。その際、理念的・哲学的議論にも増して、機械と身体の直接的接触体験からくる表象体系の方が影響力を発揮した。とりわけ、本来、機械が固有に内包している「限定的目的のための限定的機能性」というものが、従来の身体表象がもっていた「全体性」イメージを解体してゆくのを促進した。 その二。しかも、そうした部品化という身体表象の再編成は、体外から体内への人為的手立てとして実現する。結果、体表および体表感覚が「境界侵犯」されることになる。ここにこそ、後年サイボーグ的身体表象と呼ばれるものの表象的基盤が誕生した原点がある。 以上の分析に関しては、下記に示すとおり単著『気分はサイボーグ』(角川学芸出版)『身体補完計画』(青土社)として刊行し公表した。 更に上記の分析を基盤にして、「効率化」「合理化」という概念装置が、身体表象の分野から水平移動し「情報処理機器と身体性」という隣接分野にも起動してくる様を分析した。その結果は下記に示すとおり単著『サラリーマン誕生物語』(講談社)として刊行し公表した。
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