研究課題
研究実施計画に基づき、2009年度は夏休みと春休みを除いて、毎週一回の例会を東京大学本郷キャンパスで開催し、文化間翻訳、メディア間翻訳の諸相を特に日本で活躍したドイツの思想家K.レーヴィット日本近代文学の起源を論じた柄谷行人らの著作を手がかりにしてディスカッションした。そうした活発な議論のなかから、翻訳という主題系のなかでも、とりわけメディアの問題と関連性の深い「同時性」(Simultaneität)に研究会の焦点を当てる方向性が確認されていった。そして先行文献を渉猟するなかでこの概念が、ダダなどアヴァンギャルド芸術の「同時詩」など限定されたものを除くと、比較的未開拓な領域であることを発見した。11月には神奈川県逗子の日本生産性本部研修所で研究集会を開き、「同時性」を主題に研究会メンバーがそれぞれダダ、現代詩、小説、映画、建築、造園、美術などの観点から、この概念が切り開く射程の広がりを予感させる発表を行った。それを受けて1月にはこれまでで一番まとまったと目されるUllmaierによる「同時性」概念の総括的な説明を批判的に検証して、この概念の歴史的文脈の把握、個別作家カネッティ・イェリネク・クリングなどへの適用の可能性の検討が課題として浮かび上がってきた。こうした研究成果に基づき、2010年度には、12月4日に立教大学でドイツ、アメリカから研究者を招聘して、研究集会を開く方針が決定され、すでに4人の研究者から参加の内諾を得ている。
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国際シンポジウム「アイデンティティ、移住、越境」報告記録集 科研費B「世界文学における混成的表現形式の研究」2008-2010年
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Neue Beiträ ; ge zur Germanistik Bd.8/H.1/
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『災厄の想起と言語化』イルゼ・アイヒンガーと戦後文学のカノン(日本独文学会研究叢書060)(山本浩司(編))
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『ドイツ文学 名作と主人公』(自由国民社)(保坂一夫(編))
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