計画に従い学期期間中は毎月一度の会合を持ち、文化とメディア間の「翻訳」「変形」という研究主題を特化させた「同時性」という概念を巡って討議を重ねた(残念ながら三月末に予定されていた最後の研究会は東日本大震災の影響で中止にせざるをえなかった)。 昨年度の研究成果を踏まえ、ドイツ語学文学振興会の出版助成を得て、イヴァノヴィッチ(東京大学)と山本浩司(早稲田大学)の共同編纂によって4月にはケーニヒスハウゼン&ノイマン出版社(独ビュルツブルグ)より『翻訳=変容。テキスト、メディア、文化における/間の変形過程』と称する研究論文集を刊行することができた。ドイツ、オーストリア、日本の研究者18名の力を結集して、日独の文化間、文学とメディアなどを文化変容の観点から具体例を多数取り込みながら論じたものである。 夏以降は、12月初めに立教大学で開催する国際研究集会に向ける準備に重点を置き、招聘講師たちの研究論文の熟読玩味に費やした。浜崎圭子(立教大学)の主催で行われた二日間にわたる国際研究集会は、クレマー教授(哲学、ベルリン自由大学)、フェルシャー教授(歴史学、ボーフム大学)、縄田教授(ドイツ文学、中央大学)、大宮教授(ドイツ思想、慶応大学)を招聘して、各専門分野の視点から、「同時性」の概念規定にはじまり、この概念が歴史的事象や同時代の文化現象、とりわけハイパーメディア時代の文化現象の解明にとって、きわめて重要な切り口を提供することが確認された。
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