研究課題/領域番号 |
21520352
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
貝澤 哉 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30247267)
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キーワード | ロシア東欧文学 / メディア / 知覚理論 / 文学理論 |
研究概要 |
本年度は、19世紀後半から20世紀初頭のロシアにおけるメディアや知覚理論にかかわる資料を収集するとともに、おもに、ロシア・フォルマリズムと知覚理論、作家ヴラジーミル・ナボコフの詩学と知覚理論との関連にかかわる研究を継続した。 その結果「詩的言語における身体の問題:ロシア・フォルマリズムの詩学をめぐって」(『スラヴ研究』第58号、2011年6月)、「フォルマリズムはフォルムを拒否し破壊する:同時代の知覚・認識理論とロシア・フォルマリズムの「異化」概念」(『早稲田現代文芸研究』第2号、2012年3月)、さらに訳書としてナボコフ『カメラ・オブスクーラ』(光文社古典新訳文庫)を上梓した。 上記の2論文においては、ロシア・フォルマリズムの形成過程に当時の心理学・知覚理論、ベルクソニスム、現象学等と共通の問題、つまり直観的な存在の把握や、その現象的流動性、断片性といった問題が深くかかわっていることをあきらかにし、また、その背後に、知覚と身体の相関という問題が隠れていることを指摘して、従来の文学理論史研究の見方に大きな変更を加えた。 また、ナボコフの著作には、ベルクソンの大きな影響が見られることが以前から指摘されているが、彼の創作方法の主要な問題が、純粋な差異としての持続というベルクソンの時間論、イマージュ論に基づいていることが確認され、全体なき細部への偏愛というナボコフの文学の大きな特徴が、この時代の知覚理論のコンテクストに位置づけうるものであることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料収集、論文発表とも順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の進め方について、いまのところ特に変更や問題点はないと考えているので、これまでどおり、資料収集、資料読解とそのまとめ、成果発表というかたちで進めていく。
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