今年度の研究計画に基づき、当時の批評において、プルースト作品と比較されて論じられ、したがって共通の読者を持ったと考えられる作品の調査を試みた。このために、当時の批評を網羅的に調査する必要が生じ、すでに電子化されて調査が容易な著名な新聞・雑誌に限定せず、可能な限り幅広い調査をフランスにおいて行った。その結果、プルースト作品が、当時すでに評価が確立していた大作家以外の同時代の小説と比較されたことは、かなり稀であったことが判明した。その数少ない比較対象となった作品を、現代をあまり読まれなくなったものも含め、可能な限り収集し、調査分析を開始した。その中にはGaston de PawlowskiのVoyage au pays de la quatrieme demensionやjean GiraudouxのSiegfried et le Limnousinなどが含まれる。Pawlowskiは文芸芸能新聞『コメディア』の主筆であり、プルースト作品の批評を最初に行った一人でもある点で大変興味深い。Pawlowskiはそのプルースト批評の中で、ベルグソンとプルーストを結びつけて論じているが、Pawloswki自身の作品もまた、Paul Soudayによって、やはりベルグソンの時間概念との関連を指摘されている。 一方、収集した資料はすでに数千件に及ぶ。そのデータはもちろん電子化されているが、複数のソフトウェアを利用していたため、資料数の増加に伴って管理が煩雑になってきた。それを一元的にコンピュータ上で管理し、容易で確実な検索を可能にするためのデータベース構築の予備作業を開始した。
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