研究課題
研究課題(1)「非西洋地域の近代化とエクゾティシズム」について:以下の2点を考察した。・近代日本におけるイタリア文学の問題:ドイツやイギリスの文学において、時にそのエクゾティシズムを称揚されてきたイタリアとその文学が、日本に受容される際に起こるねじれについて考察した。国際比較文学会大会での口頭発表"Empathizing with Dante and D'Annunzio:Italian Literature in Meiji Japan(1868-1912)"及び日本比較文学会東京例会での口頭発表「明治のパオロとフランチェスカーワッツの絵画から漱石『それから』へ-」は、イギリスやフランス経由で日本が受容したダンテやダンヌンツィオの作品の読み替えを明らかにしたものである。・西洋的「恋愛観」の東アジアへの伝播:これまで日本文学がヨーロッパ文学から「恋愛」をどのように受容し、発展させたかについて考察してきたが、その東アジアへの広がりを探求した。エレン・ケイの思想が平塚らいてうや本間久雄経由で1920年前後の中国・韓国で広まったことを追った論文"The Quest for "Modern Love" in 1920s East Asia through the Reception of Ellen Key's Works"を発表した。研究課題(2)「エキゾティックな他者」とジェンダー・セクシュアリティーについて今年度は「一人称の語り」の問題に取り組み、太宰治の「女生徒」(1939年)における「女語り」と「ロココ」の関係を分析した。その結果、19世紀のヨーロッパではロココの退廃的・官能的な女性性とエクゾティシズムを結びつけたユイスマンスの「日本のロココ」(1874年)のような作品が現れる一方、太宰のテクストでは官能性は巧妙に排され、「永遠の少女」の孤高がロココと結びつけられること、嶽本野ばらの『下妻物語』(2002年)もそれを継承していることがわかった。『日本文学の「女性性」』(思文閣出版)に収められた論考「少女とロココ-「女生徒」における<少女>表象-」はその成果である。なお、口頭発表「エクゾティシズムと日本文学-現代文学を中心に-」は、この問題を現代文学・文化を含めた形で発展させるための契機となった。
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Artistic Vagabondage and New Utopian Project : Transnational Poietic Experiences in East Asian Modernity(1905-1960)
ページ: 13-25