平成21年度においては、課題「近代中国の自画像」の研究を実施してゆくために最終的に選定した表象的事象、すなわち、「天朝上国」-「三等国」、「獅子」-「龍」、「東亜病夫」-「医国」、「老大帝国」-「少年中国」、「睡」-「醒」に関して、国内外の資料調査と研究の総論部分に相当する論文を執筆した。具体的には、国外資料に関しては6月と10月にそれぞれ上海図書館と国家図書館(北京)において清末期の雑誌、新聞資料を閲覧、収集し、国内資料に関しては国会図書館、京都大学人文科学研究所において図像資料を中心に収集に努めた。その作業をベースに「近代中国の自画像序説」というタイトルで研究の総論をなす論文を執筆し、投稿した(『岡山大学文学部紀要』第53号、7月刊行予定)。本論文に占って、上記表象が、「自己」と「他者」の関係性によって裏打ちされた近代中国の「自己確認」と「自己再規定」のドラマとして把握できるものであることが了解された。また、その執筆を可能にした資料調査については、「梁啓超が描いた中国の自画像」というタイトルで資料集を作成し、発表した。一連の研究活動によって、今後における各論執筆の方向性が見出されたとともに、次年度における資料調査(特に国外資料に関する)の方針を立てることが可能1になった。
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