研究概要 |
本研究は20世紀の中国現代文学がアジア各地域でどのように受容され、その結果が各地域間でどのように越境・変容していくかを探る多面的、多層的な研究であり,またそれから発展する課題として、中国語が越境することで生成する「中文文学」という新たな枠組みについても研究を進めるものであった。そこで魯迅を含めて20世紀の中国現代文学の各作家が、アジア諸地域でどのような社会的、歴史的状況の中で、どのように受容されたかを具体的事例に基づいて調べることから始め,中国現代文学の時間幅を20世紀全体と設定して、五四時期新文学から文革後の新時期文学,更には台湾文学や南アジアの文学までを見渡して受容や交流の過程を探るため,2010年度にロシア・シンガポール・香港・台湾・韓国・中国から中文文学研究者を招聘して,「第八回東アジア現代中文文学国際シンポジウム」(2010年11月3-4日、日本大学文理学部中文学科・慶應義塾大学文学部中文学科・慶應義塾大学日吉教養センター・東京大学文学部中文学科共催、於:慶應義塾大学日吉キャンパス)を開催した。今年度は本研究のまとめの年にあたるので、これまで2年間継続してきた研究成果、とりわけ2010年度開催のシンポジウムにおける研究発表及び討論を成果として取りまとめるべく,発表者に中国語論文の寄稿を依頼,それをもとに編集作業を行い、『第八届東亞現代中文文學國際學術研討會論文集:跨海的東亞現代文學-漂泊・流亡・留學』(主編:山口守,編集委員:長堀祐造・小川利康,第八届東亜現代中文文学学会発行,2011年12月30日)を刊行して,各国及び日本の研究者や関係機関に送付した。この作業にあたっては,研究協力者である小川利康教授(早稲田大学商学学術院)の全面的協力を得た。
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