本年度に行った主な研究活動は以下のとおりである。 (1)論文『明代宣徳年間抄本『劉希必金釵記』の流伝について(「中国の演劇・音楽の域内・域外における発展・伝播に関する現地調査と文献研究」第2章)』は、本科研費の目的である宣徳抄本の流伝について、研究結果を出したものである。地理的・歴史的・文献学・方言学などの総合的な観点から、宣徳抄本を流伝について調べた。「金釵記」は、福建の建安で出版された元刊本、その後江西に移り、〓江を南下し、中流域の吉安で書写された。その抄本が、広東との境南嶺山脈を越えて、潮州に来た。最後に潮州の西の隴階山のふもとで副葬品として、埋葬された。このように結論した。 (2)学会発表論文「劉文龍(金釵記)与儺戯」は、中国重慶市で開催された国際儺戯学会での発表である。金釵記(劉文龍)は、安徽省池州市では、儺戯の重要な演目として今でも上演されている。本発表は、儺戯と金釵記との関係について考察したものである。 (3)論文「重慶市酉陽県の土家族の陽戯について」は、重慶市酉陽県で開催された陽戯に関して、調査した報告である。金釵記が儺戯と関係することとも関連するが、もともと中国演劇の発生の問題として、シャーマニズム柳との関係を、考究していた。重慶市で従来知られていなかった「陽戯」という劇種の儺戯を見ることができたので、この劇種について報告した。 (4)論文「汲古閣本白兎記の、曲牌ごとの曲辞異文の所在目録」は、「近世戯曲小説中の異体字研究」の一環で、成化本の白兎記の字を確定するために、それぞれの曲辞ごとに、どのような版に、同じ曲辞があるか目録を作成したものである。成化本の白兎記の異体字を調べるにあったって、どうしても必要な基礎作業である。
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